第1章
快晴・・・放射冷却で寒い朝だった。
車の中で寝ていたオレは起き出して、
タープの下で七輪に炭を起こして、暖をとりながら、
朝飯の食パンを焼いていると、佐吉もテントの中から起きて来た。
ここは広島県北の帝釈峡スコラ高原キャンプ場。
小さいけど、自然一杯。芝生のテントサイトの気持ちのいいキャンプ場だ。
しかし、さすがに11月に入って寒いのにキャンプをしようというモノズキは少ない。
オレ達ゃ、そのモノズキwwwだった。
コッヘルにガスバーナーで湯を沸かし、コーンポタージュをつくっていると、佐吉は起きてスグとは思えないかん高い大声でいきなりハイテンションに手を叩いたりしながらしゃべり始めた。
「あのネェ・・・ゆうべとっても面白かったんですヨォ」
第2章 2006年12月16日10:08
快晴・・・放射冷却で寒い朝だった。
車の中で寝ていたオレは起き出して、タープの下で七輪に炭を起こして、暖をとりながら、朝飯の食パンを焼いていると、佐吉もテントの中から起きて来た。
ここは広島備北の帝釈峡スコラ高原キャンプ場。
小さいけど、自然一杯。芝生のテントサイトの気持ちのいいキャンプ場だ。
しかし、さすがに11月に入って寒いのにキャンプをしようというモノズキは少ない。
オレ達ゃ、そのモノズキwwwだった。
コッヘルにガスバーナーで湯を沸かし、コーンポタージュをつくっていると、
佐吉は起きてスグとは思えないかん高い大声で
いきなりハイテンションに手を叩いたりしながらしゃべり始めた。
「あのネェ・・・ゆうべとっても面白かったんですヨォ」
(以上第1章)
「アハハハ」
30%ほど湿り気を帯びていて、低いのか、高いのかよくわからない乾いた笑い声をたてて、佐吉は話を進めた。
「昨日の夜、夜中にドライブかなんかで、面白いグループとゆーか、カップルがきたんですよぉ~」
朝、7時前だというのに、大きな声だ。
もっとも、ここは人里はなれた山の中のキャンプ場。
キャンプしているのも、我々ともう一組だけなので、
そう神経質に注意する必要もあるまい。
「そのカップルがね~、やかましかったけど、ものすごく面白い話してたんですよぉ~」
佐吉はそのカップルの口調を真似ながら「面白い話」を教えてくれた。
—————————————————–
「星がキレイね」
「そうね」
「こんな星がステキな夜、彼と一緒だといいのにね」
「ううん、彼氏じゃなくても、男の人ならだれでもいいよぉ」
—————————————————–
「えっ、カップルって・・・・女の子だけだったの」
オレは地元の若者の男女カップルが車で遊びに来たんだろうと思っていた。
でも、キャンプ場の予約した時に、管理人さんは「夜間は部外者が入ってこれないように道路入り口にチェーンかけるので、夜間出入りはできないので気をつけてください」っていってたんだけどな。女の子だけなら歩いて来たのかしれないな?
佐吉「そうそう、若い女の子だったんですよぉ」
オレ「若い子?・・・夜中に??」・・・
佐吉「若いといっても未成年ぢゃなさそだったんですけどネェ」
「ボクもテントの中で聞いてたんですから」
「最初は、やかましくて寝られなくなってしまったんですけど」
オレ「なーんで、出て行って話相手にならなかったの?」
なにかと解せない所が多くて、低い、小さい声でオレは聞き返した。
オレは車の中。ビール飲んで酔っ払いで寝込んでいたので気がつかなかったらしい。
佐吉は話を続ける。
興奮気味なので早口、時々よく話を聞き返さないと理解できない所も多い。
「それがネェ。そのうち今度はダンスを始めたんですよ」
「ドスン。バサッ。」
テントの中まで聞こえた音を元に推測したのだろう・・・ダンスの動きを佐吉は再現した。
第3章 2006年12月21日00:36
11月初旬。佐吉とオレはほとんど人のいないキャンプ場、
快晴で満天の星空の一夜を過ごした。
朝、佐吉は夜中の面白い出来事を、大声でオレに教えてくれた。
深夜に女の子がやってきて、話したり、ダンスを踊ったり、
テントの中で声や音を聴いていただけでも、とても楽しかったらしい。
佐吉はそのカップルの口調を真似ながら「面白い話」を教えてくれた。
—————————————————–
「星がキレイね」
「そうね」
「こんな星がステキな夜、彼と一緒だといいのにね」
「ううん、彼氏じゃなくても、男の人ならだれでもいいよぉ」
—————————————————–
「それがネェ。そのうち今度はダンスを始めたんですよ」
「ドスン。バサッ。」
テントの中まで聞こえた音を元に推測したのだろう・・・ダンスの動きを佐吉は再現した。
佐吉は、手振り、身振りで、大声だしながらダンスを踊る。
隣のテントの人たちもさすがに眼が醒めてしまったらしく、テントの中でがさごそと起き出した音がしだした。
おかしいな。深夜までって・・・この人里はなれたキャンプ場に女の子だけできて深夜までいるなんて・・・なんだか解せないオレはだまって話を聞いていた。佐吉は再び話を続けた。
それでネェ。また、話始めるんですヨォ。
—————————————————–
「アッ、流れ星」
「ちゃんと、何かお願いした?」
「ううん、できなかった」
「ぢゃ今度の流れ星の時にはちゃんとお願いしようね」
「あっ、流れた!」
「今度はチャンとお願いできた??」
「うん」
「何をお願いしたの??」・・・・・
「宝くじ!宝くじ!宝くじ!」
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さすがにこれにはオレも大爆笑してしまった。
しかし、今度は完全に隣のテントの人達も起きてしまったらしい(滝汗
そして、しばらくの間、佐吉とオレはそれ以外の話をしたり、またまた、その深夜の出来事の話を繰り返したり。
あたたかいスープとトースト。ベーコンエッグを食べながら、
とても楽しい朝のひとときをすごしていたのだった。
最終章 2006年12月21日23:07
冷たく澄んだ漆黒の空。
スターダストと流れ星。
そんな空も抜けるような明るい青空に変わり、
太陽も高くなって、陽だまりの中の空気は暖かくなってきた。
早朝、震えながら熾した炭火も色を失いはじめた。
佐吉は相変わらずハイテンションだ。
いろんな話に夕べの星空の中で起こった出来事、
何度も交えて大声で話を続ける。
寒さで凝り固まっていたオレの身体も、日の光で少しずつほぐれてきた。
隣のテントの人達も出てきて、朝食の準備をして、食べはじめた。
オレ達より道路側のサイトだったので、寝不足になったのだろうか?
無口に食事を続けている。
佐吉は相変わらずハイテンションにしゃべり続けていた。
隣のサイトの人達が、二言・三言・・・なにか話をした。
それは小さくも、大きくもない=ごく普通の大きさの声だった。
次の瞬間、佐吉が青ざめて固まった。
そして、ささやくようなかすれた声で、オレに告げた。
「ゆ・ゆ・ゆうべ、宝くじの話と、ダ・ダ・ダ・ダンスしてた人達の声です」
そう、よそからきておしゃべりをし、そして星にお願いをした・・・
と思っていた女の子達は、実はよそから来ていたのではなく、
隣のテントの人々だったのだ。
紺色のフェスティバで来ていて、昨日の夕方にはキャンプ場の管理人さんに、テントの張り方を教えてもらっているのを、オレは見ていた。管理人さんの顔を知っているオレは、隣のグループは女の子だけの四人連れ、とわかっていた。
が、管理人さんの顔をしらない佐吉は、管理人さんもキャンプのメンバーと思い込み、隣のテントは、てっきり、男女混合のグループと思い込んでいたらしかった。
そして、よそからきた女の子が、夜中に大騒ぎをしていた!
と、勘違いしてしまい・・・・大きな声で、朝っぱらから、
大笑いしながら・・・・話を続けていたのだった。
瞬時に・・・
付近一円=数十平方メートルが気まずい雰囲気になった(笑
炊事場で食器後片付け中も・・・・
普通ならキャンパー同士、お互い朝の挨拶くらいは交わすものだが、
佐吉は一言も口をきいてもらえなかったらしい。
すれ違う時も・・・・完全無視られていた。
オレは・・・その人達とは必ず30メートル以上の距離を保つように決めて、
それを実行したので実害?はなかった(汗。
9時頃・・・・隣の女の子達はそそくさとテントを片付けると、
足早に紺のフェスティバに乗り込んで、去っていった。
フェスティバの影が消えたとたん・・・・
オレはそれまで押し殺していた言葉を一気に開放し、
こらえていた笑いを一気に爆発させたのだった。